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仔猫 改め ココアまたは小虎

6月21日に まてちゃ の肩めがけてやってきて、トイレもエサもすぐに覚えて、
耳と足の立派な、ちっちゃな男の子である。とても元気が良く、ひとりでも遊ぶ。
なぜか いっぷく にも良く懐いて、胸や肩や脇の下で眠るのが大好きである。

24日、目ヤニばかりでなく、左目が腫れっぽいと まてちゃ が気にし始めて、
週末獣医さんへ連れていくことにし、いっぷく の仕事の都合で土曜に決めた。
いっぷく  まてちゃ の後ろから、仔猫を抱いたまま、小さい声でささやいた。
「内緒にしてたけど、ちゃんと名前あるんだもんね。獣医さんには内緒だけど。」

土曜日の夕方に、獣医さんへ行って、念のための検査用に太股から採血した。
なにしろ体重1kgの仔猫なので上手くゆかず、みんな可愛そうがって苦笑した。
獣医さん一家のママさん先生が、しきりに「キレイな仔猫ちゃん」と誉めるのは、
早く名前を決めて、家族の一員に迎えてみては、という勧めだろうと笑っていた。
いっぷく はココア、 まてちゃ は小虎がいい、と言って結論はまだ出なかった。

もらった点眼薬を投与しながら、「嫌いにならないでね」と まてちゃ は笑った。
それから、スーパーで仔猫用のポリポリやミルクなど、あれこれと取り揃えた。
平穏で幸せな週末も終わりかけた日曜日の夜10時ごろ、突然、仔猫が吐いた。
エサや異物はまったく含まず、黄色がかった胃液とおぼしき液体だけであった。

その後、12時、2時、4時、6時と、ほぼ2時間毎に、いっぷく の傍らで吐いた。
27日月曜日の朝、早いほうがいいだろうと、ふたりとも仕事の予定を変更して、
獣医さんへ行き、血液検査の結果、伝染病の疑いはないと聞いて、ほっとした。
仔猫は体力がないからと多めに点滴を注射したが、震えたりせずじっと耐えた。

家に帰ると、やや落ち着いた様子ながらも疲れたらしく、こんこんと眠り始めた。
午後3時、いっぷく が早々に仕事から戻ってみると、一度だけ吐いた跡があり、
仔猫がだるそうにしていたので、弱くクーラーをつけて、胸の上に乗せて眠った。

午後6時半頃には まてちゃ も仕事から帰ってきて、その様子を見て苦笑した。
獣医さんは夜7時までなのだが、明朝でもいいだろうと言いつつ起きることにした。
しばらくして いっぷく の後を追って一階に下りてきた仔猫が、突然また吐いた。
吐瀉物をティッシュで受け止めた まてちゃ が、「虫だっ!虫がいる!」と叫んだ。
虫を食べたかと思って見ると、針金ほどの太さのピンク色の虫がうごめいていた。

午後7時半、時間外でも構わん、と獣医さんに電話すると、ママさん先生が出た。
虫下しを飲ませてもすぐ吐いてしまうだろうから、朝また連れていくことになった。

深夜3時、まてちゃ の泣きそうな声で目が覚めた。「朝まで待てない。死んじゃう」
あちこち電話をしまくる まてちゃ の傍らで仔猫の背を撫でると瞬きもしなかった。
やがて苦しげにふた声ほど啼いたあと、かすかに上下に動いていた腹が止まった。
「息してないよ!」 いっぷく が言うと「縦にして抱いてあげて」と まてちゃ が言う。
首はぐったりと垂れ、顔を上に向けても瞳孔は反応しない。「だめか」涙があふれる。

3時半、受け入れ先の病院が見つからないため、とにかくいつもの獣医さんへ行く。
自宅のチャイムの呼び鈴を押しても返事はなく、まてちゃ は頑張れと囁き続ける。
微かにお腹が動いたと まてちゃ が言う。しつこく呼び鈴を押すと、先生が起きた。
診察台に乗せようとした まてちゃ が泣きながら言う。「だめかぁ。もう冷たいもの」
実際のところ、もう仔猫の身体は硬くなり始めていた。先生も残念そうに口ごもった。

お礼を言いつつお代を訊ねると結構だと言う先生に、もう一度お礼を言い帰路につく。
涙が湧いてきて運転がままならない いっぷく だったが、無事に遺体を連れ帰った。
いま5時半である。ふたりとも泣きながら色々な想い出を語った。6時には埋葬しよう。
わずか数時間前、死神と闘った勲章の汚れたシーツの洗濯が、もうじき終わるだろう。

ココアまたは小虎 平成17年6月28日午前4時永眠 享年2.5ヶ月位 体重800g

いっぷく
by nekoyasiki_ippuku | 2005-06-28 05:43 | 猫たちのこと


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