ああ無力(0^~^0)

今日、帰宅するとき、いっぷくと混雑した電車に乗った。
途中駅まで止まらない郊外へ行く電車だ。

発車してすぐに、混雑した車内から、
「ひぃ、ひぃ、ひゃ・・・」と女性の声。
見ると、離れた席で腰掛けていた女性の顔が天井を向いていた。ついでまぶたが激しく痙攣する。見る間に顔面から血の気が失せていく。口がガクガクしている。
崩れるように椅子から落ちていき、周りの人が少し引く。落ちる直前に近くの男性が支える。
「てんかん・・・」そう小声で私が言うのとほぼ同時に目の前の女性が立ち上がり、駆け寄る。
混んだ車内をものともせずに、人を掻き分け女性にたどりつく。
「緊急ボタン押してください」躊躇せずに言う。
ボタンを押し、ベルが鳴り、電車が止まる。

「大丈夫?」
「苦しいね、少し緩めるからね」
「わかる?大丈夫だからね。わかる?」

看護師か、その心得のある人だ。意識の確認を盛んにし、女性を横にし、着ているものを緩めていく。
「お医者さん居ますか?」車内の誰もが、あたりを見回す。それらしき人も居ない。

ああ、私は無力だ。
普段、多くの医者と接し、医療の情報化だなんだと御託を述べているくせにに、目の前の事態に指一本動かせない。


「ただ今、車内警報により、電車緊急停止します」と車内アナウンスが流れる。
「車掌呼んできて」といっぷくに頼む。ぐずぐずしていられない。
後ろから2両目とは言え、これだけ混雑した車内だと、車掌のところにたどり着くのは容易ではない。
いっぷくが声を出して、最後尾車両に向かう。

やがて車掌がやってきて、一番近くの各駅停車用の駅に停めることとなった。
くだんの女性が患者をさかんに気遣う。
「大丈夫だからね。息して。深呼吸して」
「めくるからね。これじゃ嫌だよね。みんなに見られるしね。かと言ってタオルかけるわけにいかないし・・・」
「大丈夫だからね。もう平気だよ」

近くの男性が上着を脱いで患者にかけてあげようとしていた。

「水は?誰か飲み物ない?」
「いや、この状態じゃ、水は無理」

私が無力だと感じるように、周りの人も何かできないかと探す。
でも、彼女以外に誰も力になれそうもなかった。

やがて、患者は意識が戻り、座ると言い出した。
人垣から垣間見るに、もう顔色も戻っていた。

「この電車、車内にて急病人が発生したため、○○駅に緊急停車します。皆様、ご協力のほどお願いします」
駅に着くとホームから駅員が入ってくる。
「大丈夫そうなんですけどね。どうしましょうかね?家の人に迎えにきてもらいましょう。降りようね」
そう促して、患者を駅に降ろす。

やがて、電車が動き始めると、彼女は元の席に戻り、汗を拭くと、静かに目を閉じてしまった。

すごいわ。拍手。拍手。
いっぷくと顔を見合わせて小さく「パチパチぱち」と口を動かした。
お見事。
私たちには「てんかんかもしれない」と思う以上に、何ができただろうか?
てんかんであるという確信すら持てなかった。だって、本物のてんかんとそれ以外の症状のどこが違うかと問われたら、「てんかんに似た症状」について、可能性の排斥ができないのだから。
こんなとき、本当に命を預かる職業の人を尊敬する。
普段、えらそうになんだかんだ言っても、「ああ無力だ」と実感するしかないのだから。
何かひとつでもできるようになれたら・・・と思ってしまう。
[PR]
by nekoyasiki_ippuku | 2006-12-19 00:22 | 喜怒哀楽


<< 名前も忘れたクリスマスの料理(... 特攻Aチーム:上棟式(0^~^0) >>